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- Beauty Gallery Berlin <1998>

Beauty Gallery Berlin
1998
用途 /資生堂ショールーム
所在地/ドイツ ベルリン
面積 /76㎡ プロデュース/Dinah Jordan

- ブライプトロイ通り
壁で分断された緊迫感がこの都市を独得のものにした。

東西がひとつになった今でも、ベルリンの空気は固い。

ブライプトロイ通りは、西ベルリンのメインストリートに沿う静かな道で、19 世紀の街並が保存されている。その中の古い建物の1階に、資生堂のドイツでのショールームが計画された。東京の表参道のショールーム「コスメティックガーデンC」のフィロソフィーを受け継ぐ、小さなコミュニケーションスペースである。この工事現場では、いかにもドイツの幻想のような不思議なことが起こった。工事最後の日、ガラス職人が大ガラスを金物枠に嵌め込んで終わりという午後3時頃(ちなみにこの金物工事はバウハウスゆかりの職人たちによる仕事だった)、脚立の上で足を踏み外し大ガラスが落下、職人も下に落ちてうずくまってしまったのだ。幸いガラスによる切り傷はなかったが、どうも足を骨折したらしく動かず唸るばかり。パニックになったそのとき、ブライプトロイ通りから魔法使いのような風体の女性が歩み寄ってきて職人の足に手をかざした。ドイツ的幻想譚を目のあたりにするようだったが、唸っていた職人は気を取り戻し、笑ったのだった。ベルリンの9月の空気は鉱物のような物質感に満ちているのだが、その職人の笑いに、私はヨゼフ・ボイスの植物的な底深さを感じた。小さなコミュニケーションスペース作りの挿話にとても相応しい出来事だった。

ショールームは保存建築なので天井は19世紀の様子を残存している。屏風のような 大ガラスと光のしつらえが、いわば19世紀に滑り込む格好になっている。

有限会社 飯島直樹デザイン室
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