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- 5S New York <1998>

5S New York
1998
用途 /資生堂ショールーム
所在地/Prince St.New York.NY
面積 /245㎡
ウィンドウディスプレイ/吉岡徳仁
ディレクション/Madonna Badger
協力 /今井洋介

- かろうじて限定する空気の量
7歳の頃、紙芝居をつくるほどに、牛若丸つまり源義経の姿と一生を見えるものにしたかった。義経出陣の際の緋威 の鎧、今でも克明に描写できる。 源氏の旗は白であり、合戦のときの陣幕も白である。平家の赤も立ち騒ぐ感じが美しいが、夜の陣中の篝火 に照らされる白の陣幕はことのほか美しいと想像した。 漆黒の闇に浮かび上がる白い布。その布によって区分けされる山中のこちらとむこう。戦いの前夜の緋威の鎧がゆらゆらと動めく。そんな陣幕の内側の空間が、この上なく官能的に思えたのだった。 爾来、平安鎌倉時代のそのような布による結界を、私は空間把握のお手本とした。強固な実体であるよりも、布で囲われただけの霞のような空気の限定を、空間のはじまりとして意識した。 そして私は、インテリアデザインの仕事を続ける中で、このようなほんの少しの「空気の限定」がインテリアデザインに固有な空間把握ではないか、と思うようになった。 ソリッドな事物として認知できる建築と違い、内部空間は形として見ることができない。 目の前に空間の拡がりと全容があるのにファインダーのフレームに限定せざるを得ない写真の不自由な空間把握とも似ている。 見えるのは、うつろな空気を相手に部分と表面を辿り、かろうじて限定する空気の量である。 そんなふうに思い、しかし不自由かも知れない内部空間のネガティブなありようを好んだ。空気の囲いこみという感覚において、陣幕の内側の空間に近いのだな、とも思った。 5Sのデザインは、そのような内部空間の特質「かろうじて限定した空気の量」のようなものである。 「内部の内部」、内壁から2フィート離隔した半透明のガラススクリーンがさしずめ陣幕であるかのような二重空間の所作である。

有限会社 飯島直樹デザイン室
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