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- 円錐の椅子 | Cone Chair <1987>

円錐の椅子

東京デザイナーズウィーク KAGU
1987
用途 /椅子
所在地/東京都港区六本木 AXIS
制作 /スパークス、ミネルヴァ

- 形と運動
1988年、かなり大掛かりなデザイン展が実行された。東京の会場16カ所で同時開催 した「KAGU Tokyo Designer’s Week 88」である。展覧会のテーマがなんと「欲望」。 隠しようのないあの時代の表出だった。

「円錐の椅子」はそのときの出品作。隠しようのないその時代の、私の一身上の都合 の痕跡である。「形」と形が作りあげる共同幻想「形式」を、一方で「運動」という概念 によって離反すること。そんな矛盾する80年代末の都合を抱えていた。「欲望」が冷 却された数年の後、私は形についてこんな小文を書いた。

『去年から、「SECTION」というデザインシンポジウムの企画に関わっている。今年 (1994年)の6月には、建築家のガエターノ・ペッシェをゲストに招待した。1960年代の家 具から最近の都市計画に至るまでを、スライドで辿りながら語ってもらった。

企画に加わっていながら、私は今回のシンポジウムにあまり期待を持っていなかった。 ペッシェの仕事は自分の興味の埒外にあると思っていたからである。むしろ、そのオ ドロオドロしさを嫌いだとさえ感じていた。ところが、結果は大いに興味をそそられた のである。

ペッシェの作品の特徴は、それがすべからく、時に気持ち悪いまでに不定形であると いうことだ。そして初期の作品から現在に至るまで、そのことが徹底して反復されて いることに改めて驚く。もちろん生来の資質がそうさせるのだろうが、その徹底ぶり を見ているとどうもそれだけではなさそうだ。私はそこに、現在のデザインが直面せ ざるを得ないリアリティの困難さについての戦略的なモチーフを感じた。それは形か らの離反というモチーフである。

このモチーフは、イタリア人であるペッシェの活動の場がほとんどイタリアの外であっ たことと関係しているように思える。イタリアという形の強権の風土から離反するこ とと、形に収斂することを拒否し続けるペッシェの方法は、どこかで重なっている。 文字通り世界を移動しながら飛び回る、ノマドのようなペッシェ。20年以上反復し続 ける、形からの離反というモチーフが、モダニズムの還元的情熱が行き場を失った70 年代以降、様々なスタイルが消費されていく中で、ミニマリズム的消去へ向かうので はなく「アンフォルメル」的な雑音や身体性に導かれ続けてきたことを、今とても新鮮 に感じる。』(ガエターノ・ペッシェを嫌いだが)

80年代から90年代への変化を、私はそんな風に感じていた。

有限会社 飯島直樹デザイン室
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